現在地

三峰川 岳沢

【行動概要】

 三峰川岳沢は学生の頃から憧れていた。年末が近づくたびに今年こそはと思うのだが、天気が悪かったり、仲間と休暇の折り合いがつかなかったり、体調を崩したりで延び延びになっていた。2015年の暮れは、出かけたものの暖冬でF1が凍っておらず、涙をのんで敗退した。去年の暮れも暖冬であきらめ、今シーズンも駄目かと思っていたが、3月に入っても寒気が持続した。これは行けるかもしれない。3月17日の夜、相棒と2人で再び岳沢に向かった。

 翌朝、入山口に着いてみると、山ヤと見られる車が数台止まっている。驚いた。貸し切りとばかり思っていたが、同じことを考える連中がいるものだ。アプローチは、前回敗退時に一往復分歩いているので、迷わず進む。南沢の二股から沢通しに行かず、右岸を大きく高巻く。南沢奥の滝も前回は右岸を大きく高巻いたが、今回は凍っていたのでそのまま通過。滝の上で左岸に移り、樹林の急登を重荷に喘ぎながら岳沢越へ。いったん三峰川へと降り立ち、再び岳沢に登り返す。前回は積雪が無く石がごろごろして歩きにくかったが、今回はただの雪の斜面になっている。そして前回水がジャージャー流れていて敗退を決意したF1は、驚いたことに簡単な氷雪壁になっていた。今回も凍っていなかったら岩登りをしてでも突破しようと考えていただけに、拍子抜けした。ここで登攀準備を整え、ノーロープでF1を越える。雪に埋もれたF2は気づかないまま通過。F3は氷が溶けてスカスカの状態になっていた。ここはロープを出して、まずは比較的凍っている右の緩傾斜から取り付く。そのまま氷のない草付きを経由し、上部氷壁に出てスクリュービレイ。フォローが、そのままF4にロープを伸ばす。この辺で他パーティーと一緒になる。F4は左側が比較的登りやすいが、ソロの男性が取り付いていたので、我々は氷の正面部分に取り付いた。ここはⅣ+位あるので、リードは荷揚げをし、フォローは背負って登った。F4を越えると、さすがに疲れてきた。足が悲鳴を上げている。F5の上に開けた場所があり、この日、我々を含めた4パーティーが幕営した。

 昨夜は小雪も舞い、すごく冷え込んだ。寒さの中、ソーメン流しの大滝で順番待ちをするのを嫌って、ゆっくりと準備をして、6時20分、しんがりで出発する。F6、F7は雪に埋没して傾斜の強い雪壁になっている。そしてF8、メインディッシュのソーメン流しの大滝を仰ぎ見る。110mというが、下の方はずいぶん雪に隠れてしまっている。それでも岩壁の中をうねうねと立ち上る龍のようだ。1ピッチ目、左上気味に弱点を突いて登る。右側に立木があるが、他パーティーが使用していたため、氷の斜面にスクリュー2本を打ち込んでビレイポイントとする。相棒が登ってきて、そのまま2ピッチ目へ。ビレイしながら突然思い出した。そういえば今日は自分の誕生日だったんだと。何歳かは忘れたが、誕生日に、夢にまで見た岳沢、しかもソーメン流しを登れるとは、何という幸せなことかと心底思った。最上部の氷は、岳沢を吹き上げる寒風に叩かれてとても固かった。ソーメン流しを登り切ると、幕営可能な開けた場所になっており、ここでロープを解いた。ここからは長い長い登りとなる。先行者のトレースがあるのでありがたく使わせてもらう。岳沢の最上部で左手の小尾根に乗り、ついに念願の大仙丈ヶ岳の明るい頂上に抜け出すことが出来た。自分にとっての長年の宿題が終わった。

【タイム】

3月18日(土)

杉島ゲート(7:10)⇒丸山谷出合(8:20)⇒南沢二股(9:30)⇒営林小屋跡(10:20)⇒岳沢越(12:20)⇒岳沢出合(12:50)⇒F1(14:00)⇒F5上幕営(17:15)

3月19日(日)

出発(6:20)⇒F8下(6:50)⇒F8上(8:40)⇒大仙丈ケ岳(10:10)⇒仙丈ケ岳(11:00)⇒北沢峠(14:00)⇒丹渓山荘(15:30)⇒戸台の駐車場(18:00)

【留意点】

・岳沢の幕営地はF1手前、F5上部、F8上部くらいか。

・当初3日計画だったが、トレースに助けられ2日で終了した。

・軽量化のための工夫が必要。テントはスリーシーズン2人用テント(エスパースデュオ)をフライなしで使用し、本体から張り綱が取れるように改造した。メインロープは9ミリ50メートル1本とし、荷揚げ用に7ミリ40メートルを持った。その他、各自スリーシーズン用シュラフにしたり、防寒具を持たなかったりなど。

・当然のことだが、谷なので全般に雪崩地形である。ドカ雪の年末年始、南岸低気圧の通過中・通過直後、積雪を増した3月の気温上昇時などは要警戒と思われる。また低気圧が通過する際の、稜線での暴風雪も要警戒。谷を出るタイミングと低気圧通過のタイミングを事前に見極める必要があろう。